かつて、関節リウマチは「不治の病」とされ、進行する関節破壊によって多くの患者さんが日常生活に支障をきたしていました。しかし、この二十年ほどの間に治療法は劇的な進歩を遂げ、今やリウマチは「コントロールできる病気」へと変わりました。その中心にあるのが、強力かつ多彩な薬物療法であり、それを的確に使いこなすリウマチ科・膠原病内科の専門医の存在です。現代のリウマチ治療の基本戦略は、「早期診断・早期治療」そして「寛解(かんかい)を目指す治療(Treat to Target)」です。寛解とは、病気の症状や兆候が消失した状態を指し、この状態を維持することで、将来の関節破壊や機能障害を防ぐことを目指します。この目標を達成するための第一選択薬、いわば治療の土台となるのが「メトトレキサート(MTX)」という抗リウマチ薬です。MTXは、異常な免疫反応を抑えることで、多くの患者さんの病気の活動性をコントロールできる非常に優れた薬です。しかし、MTXだけでは効果が不十分な場合や、副作用で使用できない場合には、次の一手としてより強力な薬剤が用いられます。その代表が「生物学的製剤」と「JAK(ジャック)阻害薬」です。生物学的製剤は、バイオテクノロジーを用いて作られた薬で、リウマチの炎症を引き起こす特定の物質(サイトカインなど)をピンポイントで狙い撃ちし、その働きをブロックします。点滴や皮下注射で投与され、非常に高い効果を発揮します。一方、JAK阻害薬は、炎症の信号を細胞の中で伝えるJAKという酵素の働きを阻害する飲み薬です。効果の発現が速いのが特徴です。これらの専門的な薬剤は、効果が高い反面、免疫を抑えるため感染症のリスク管理が不可欠であり、専門医による慎重な判断と定期的なモニタリングが求められます。リウマチ専門医は、患者さん一人ひとりの病状やライフスタイル、合併症などを考慮し、数ある選択肢の中から最適な薬を選び出し、その効果と安全性を常に評価しながら治療を進めていきます。リウマチ治療は、もはや専門家なしには語れない時代なのです。
リウマチ治療の最前線。薬物療法と専門家の役割