夏の暑い日、元気に遊びまわっていた子供が、急に「気持ち悪い」と訴えたり、実際に嘔吐してしまったりすることがあります。これは、熱中症の危険なサインの一つですが、なぜ子供は大人に比べて熱中症で吐きやすいのでしょうか。その理由と、親が取るべき正しい対処法を知っておくことは、子供の安全を守る上で非常に重要です。子供が熱中症で吐きやすい理由は、主にその体の特性にあります。まず、子供は体温調節機能が未熟です。汗をかく能力が大人ほど発達していないため、体に熱がこもりやすく、体温が急上昇しやすいのです。急激な体温上昇は、自律神経のバランスを崩し、胃腸の働きをコントロールする神経にも影響を及ぼし、吐き気を引き起こします。また、子供は体重に占める水分の割合が大人よりも高く、それだけ多くの水分を必要としますが、一方で、体重あたりの体表面積が大きいため、汗や皮膚からの蒸発によって水分が失われやすいという特徴があります。つまり、「水分の出入りが激しく、脱水になりやすい体」なのです。脱水状態になると、消化管への血流が減少し、胃の機能が低下するため、吐き気に繋がります。さらに、子供は遊びに夢中になると、のどの渇きを自覚しにくく、自分から積極的に水分を摂ることを忘れがちです。これらの要因が複合的に絡み合い、子供は大人よりも熱中症による嘔吐を起こしやすいのです。もし、子供が吐き気や嘔吐を訴えたら、親は冷静に、しかし迅速に行動しなければなりません。まず、直ちに全ての活動を中止させ、日陰や冷房の効いた室内など、涼しい場所へ移動させます。衣服を緩め、濡れたタオルなどで首筋や脇の下、足の付け根を冷やして、体温を下げることに努めます。水分補給は、子供用の経口補水液が最適です。吐いた直後は胃が刺激に敏感になっているため、すぐに飲ませるのではなく、5〜10分ほど様子を見てから、スプーン一杯程度の少量から始め、吐かないことを確認しながら、少しずつ量を増やしていきます。もし、嘔吐が繰り返される、ぐったりして意識がはっきりしない、といった場合は、自家製の経口補水液では間に合いません。重度の脱水状態に陥っている可能性があるため、ためらわずに救急車を呼ぶか、夜間でも救急外来を受診してください。