手足口病のつらい症状がようやく落ち着き、発熱や口内炎、手足の発疹の痛みから解放された頃、多くの子供や大人が経験するのが「皮むけ(落屑)」という現象です。特に、発疹がひどかった手のひらや足の裏、そして足の甲の皮膚が、まるで日焼けの後のように、あるいは脱皮するかのようにベロベロとむけてくることがあります。見た目が少し痛々しいため、病気がぶり返したのではないかと心配になる保護者の方もいますが、これは手足口病の回復過程で起こる正常な反応であり、過度に心配する必要はありません。では、なぜこのような皮むけが起こるのでしょうか。手足口病の発疹は、ウイルスの感染によって皮膚の深い部分、表皮とその下の真皮の間で炎症が起こることで形成されます。この炎症によって、皮膚の細胞はダメージを受け、その部分のターンオーバー(新陳代謝)が一時的に乱れてしまいます。病気が回復に向かうと、体はダメージを受けた古い皮膚を排出し、その下にある新しく健康な皮膚を表面に出そうとします。この、いわば「皮膚の入れ替え作業」が、私たちの目には皮むけとして映るのです。特に、手のひらや足の裏、足の甲といった、もともと角質層が厚い部分は、炎症の影響が大きく残りやすく、むけ方も派手になる傾向があります。この皮むけは、通常、痛みやかゆみを伴うことはありません。大切なのは、むけかけている皮を無理に剥がそうとしないことです。無理に剥がすと、まだ未熟な下の皮膚を傷つけてしまい、そこから細菌が入って感染症を起こす原因になりかねません。自然に剥がれ落ちるのを待つのが一番です。乾燥が気になる場合は、保湿クリームを優しく塗ってあげると、皮膚の保護に役立ちます。皮むけは、発疹のピークから一週間から数週間後に始まり、完全に新しい皮膚に入れ替わるまでにはさらに一、二週間かかることもあります。これは、体がウイルスと戦い、見事に勝利した証し。焦らず、優しく見守ってあげましょう。