口の中にできた一つや二つの口内炎は、多くの人が経験するありふれた症状です。しかし、その口内炎と同時に「発熱」が見られる場合、それは単なる口のトラブルではなく、体が発しているより深刻な警告サインである可能性を考える必要があります。口内炎と発熱が同時に起こる背景には、様々な原因が隠れていますが、その多くは「ウイルス感染症」です。私たちの体は、ウイルスという異物が体内に侵入してくると、免疫システムをフル稼働させて戦い始めます。この免疫反応の一環として、体温を上げてウイルスの増殖を抑えようとするのが「発熱」です。そして、ウイルスの中には、口の中の粘膜で特に増殖しやすい性質を持つものがいます。これらのウイルスが口の粘膜に感染し、炎症を起こすことで「口内炎」が発生するのです。つまり、口内炎と発熱が同時に起こるのは、全身でウイルスとの戦いが繰り広げられている証拠と言えます。子供の場合、この組み合わせで最も代表的な病気が「ヘルパンギーナ」と「手足口病」です。どちらも夏風邪の一種で、エンテロウイルス属のウイルスが原因です。ヘルパンギーナは、突然の高熱と、喉の奥にできる多数の小さな水疱性の口内炎が特徴です。一方、手足口病は、口内炎と発熱に加えて、その名の通り、手のひらや足の裏にも特徴的な発疹が現れます。また、もう一つ重要なのが「ヘルペス性口内炎(歯肉口内炎)」です。これは、単純ヘルペスウイルス1型に初めて感染した時(初感染)に起こることが多く、高熱と共に、歯茎の腫れや出血、そして口の中全体に多数の痛みを伴う口内炎ができるのが特徴です。大人でも、疲労やストレスで免疫力が低下した際に、これらのウイルスに感染し、口内炎と発熱を同時に発症することがあります。ウイルス感染以外にも、稀ではありますが、ベーチェット病のような自己免疫疾患や、血液の病気が原因で口内炎と発熱が起こることもあります。いずれにせよ、口内炎と発熱が同時に現れたら、「たかが口内炎」と侮らず、その背後にある原因を突き止めるために、医療機関を受診することが重要です。
口内炎と発熱が同時に。考えられる主な原因とは