自分が溶連菌と診断された時、あるいは家族が感染した時、特に熱がないと「感染力は弱いのかな」「周りの人にうつる心配はないのだろうか」と疑問に思うかもしれません。結論から言うと、たとえ熱がなくても、溶連菌感染症である以上、その感染力は変わりません。適切な感染対策は必須です。溶連菌の主な感染経路は、咳やくしゃみによって飛び散る飛沫を吸い込む「飛沫感染」と、ウイルスが付着した手で口や鼻を触ることによる「接触感染」です。熱の有無は、この感染力に直接的な影響を与えません。喉にいる溶連菌の数が多ければ、それだけ飛沫に含まれる菌の量も多くなり、感染のリスクは高まります。では、具体的にどのような対策が必要でしょうか。まず、患者さん本人が行うべき最も重要な対策は「マスクの着用」です。会話や咳によって飛沫が周囲に拡散するのを防ぐことができます。次に「手洗い・手指消毒」の徹底です。無意識に口元に触れた手で、ドアノブや共有の物品に触れると、そこから接触感染が広がる可能性があります。石鹸と流水による手洗いや、アルコール消毒をこまめに行いましょう。家庭内での対策としては、タオルの共用を避けることが挙げられます。食器や箸については、通常の洗浄で問題ありませんが、気になる場合は分けて洗うとより安心です。職場への出勤については、どう考えればよいでしょうか。学校保健安全法では、溶連菌感染症は「条件によっては出席停止の措置が必要と考えられる疾患」とされています。大人の場合、法律による明確な出勤停止の規定はありませんが、感染拡大を防ぐという観点から、職場と相談の上で対応を決めるのが望ましいでしょう。一般的に、溶連菌の感染力は、有効な抗菌薬を服用し始めてから二十四時間経てば、ほぼなくなるとされています。そのため、診断を受けた翌日までは休み、翌々日から出勤する、といった対応が現実的です。熱がないからといって感染対策を怠ると、気づかないうちに周囲の人、特に免疫力の弱い子供や高齢者に感染を広げてしまう可能性があります。社会の一員として、責任ある行動を心がけることが大切です。
熱のない溶連菌。職場や家庭での感染対策は必要?