子どもが手足口病にかかり、症状が回復傾向にある時、「近所のプールくらいなら大丈夫かな」「温泉でゆっくりさせたいな」と考える保護者もいるかもしれません。しかし、これは絶対に避けるべき行為です。たとえ熱が下がり、本人が元気そうに見えても、手足口病の療養中にプールや公衆浴場、温泉といった不特定多数の人が利用する施設へ行くことは、公衆衛生の観点から、そして子どもの体を守るという観点からも、厳禁です。その理由は、大きく分けて二つあります。第一の、そして最大の理由は、「感染拡大のリスク」です。手足口病の原因となるエンテロウイルスは、非常に感染力が強く、症状が治まった後も、長期間にわたって便から排泄され続けます。プールの水は塩素で消毒されていますが、ウイルスの量が多ければ、完全に不活化できるとは限りません。特に、おむつが取れていない幼児がプールに入ることで、便が水中に漏れ出し、感染源となるリスクは否定できません。また、プールサイドや更衣室の床、ロッカー、シャワーといった場所を、ウイルスが付着した手足で触れることで、接触感染を広げてしまう可能性も非常に高いです。温泉や公衆浴場も同様で、脱衣所の床や椅子、洗い場の桶などを介して、他の利用者にウイルスをうつしてしまう危険性があります。多くのプールや公衆浴場では、手足口病などの感染症にかかっている場合の利用を規約で禁止しています。これは、集団感染を防ぐための社会的なルールであり、保護者として必ず守らなければならないマナーです。第二の理由は、「子どもの体への負担と二次感染のリスク」です。病み上がりの子どもの体力や免疫力は、まだ完全には回復していません。不特定多数の人が集まる場所は、他の様々な細菌やウイルスに暴露されるリスクも高く、別の感染症をもらってしまう可能性があります。また、手足口病の発疹がまだ残っている状態でプールの塩素に長時間触れると、皮膚への刺激となって症状を悪化させたり、掻き壊した部分から細菌が侵入して二次感染を起こしたりする危険性もあります。子どもの体を本当に思うのであれば、全ての症状が完全に消え、医師から集団生活への復帰許可が出るまでは、自宅のお風呂で静かに療養させるのが最善の選択です。