「この間、溶連菌にかかって薬を飲んだばかりなのに、また喉が痛い。再発したのだろうか?」溶連菌感染症を経験した大人が、再び同様の症状に見舞われた時、このような疑問を抱くことがあります。この場合、「再発」と「再感染」という二つの可能性が考えられますが、両者は似て非なるものであり、その原因と対策は異なります。まず「再発」とは、前回の治療で体内にいた溶連菌を完全に除去しきれず、生き残った菌が再び増殖して症状を引き起こすケースを指します。この最も一般的な原因は、処方された抗菌薬を自己判断で途中でやめてしまうことです。症状が消えたからと服用を中止すると、わずかに生き残っていた菌が勢いを盛り返し、数日後から数週間後に再び喉の痛みなどを引き起こします。これを防ぐためには、医師から指示された期間、抗菌薬を最後まで飲み切ることが絶対条件となります。一方、「再感染」とは、前回の治療で一度は完全に治癒したものの、外部から新たに別の溶連菌に感染してしまうケースです。溶連菌には、実は百以上の異なる血清型(タイプ)が存在します。一度あるタイプの溶連菌に感染しても、そのタイプに対する免疫しかできません。そのため、家族や職場で別のタイプの溶連菌が流行していれば、それに新たに感染してしまう可能性があるのです。特に、集団生活を送る子供がいる家庭では、子供が保育園や学校から次々と異なるタイプの溶連菌をもらってきて、それが大人にうつる、というパターンは珍しくありません。また、自分自身の免疫力が低下している時も、普段なら感染しないような少量の菌でも感染しやすくなります。では、再び症状が出た場合、どうすればよいのでしょうか。答えは一つです。前回と同様に、速やかに耳鼻咽喉科や内科を受診し、再度、迅速検査を受けることです。そして、陽性であれば、また新たに抗菌薬による治療を開始する必要があります。それが再発であれ再感染であれ、体内に溶連菌がいるという事実に変わりはなく、合併症のリスクを避けるためには、その都度、確実な治療が求められるのです。溶連菌は、一度治っても油断できない相手だと心得ておきましょう。
溶連菌の再発?それとも再感染?大人が知るべき違い