関節が痛む時、多くの人がまず思い浮かべるのは「整形外科」かもしれません。骨や関節、筋肉といった運動器の専門家である整形外科は、ケガや加齢による変形性関節症などの治療において中心的な役割を果たします。しかし、その痛みの原因が「関節リウマチ」である場合、整形外科だけでは最適な治療が受けられない可能性があります。関節リウマチと、整形外科が主に扱う変形性関節症などとの間には、病気の成り立ちに根本的な違いがあるからです。整形外科が扱う変形性関節症は、主に加齢や長年の負荷によって関節の軟骨がすり減り、骨が変形することで痛みが生じる「機械的な摩耗」が原因です。治療は、痛み止めの処方やヒアルロン酸注射、リハビリテーションが中心となり、最終的には人工関節置換術などの手術が必要になることもあります。一方、関節リウマチは、免疫システムの異常によって関節に炎症が起きる「内科的な炎症性疾患」です。治療の目的は、単に痛みを和らげるだけでなく、異常な免疫反応そのものを抑え込み、炎症を鎮静化(寛解)させ、病気の進行と関節破壊を食い止めることにあります。この免疫をコントロールする治療こそが、リウマチ科や膠原病内科の専門領域なのです。近年のリウマチ治療は目覚ましく進歩しており、メトトレキサートという抗リウマチ薬を基本に、効果が不十分な場合には生物学的製剤やJAK阻害薬といった分子標的薬が用いられます。これらの薬は非常に効果が高い一方で、免疫を抑えることによる感染症などの副作用管理も必要となり、専門的な知識と経験が不可欠です。もちろん、リウマチによって関節の破壊が進んでしまった場合には、整形外科での手術が必要になることもあり、リウマチ科と整形外科が連携して治療にあたることも少なくありません。しかし、病気の活動性をコントロールするという治療の根幹を担うのは、あくまでリウマチ科・膠原病内科です。朝のこわばり、複数の関節の腫れと痛みといった症状があれば、まずは免疫の専門家であるリウマチ科の受診を検討しましょう。