それは、締め切りに追われる忙しい週の半ばでした。朝起きると、喉に軽い違和感がありました。季節の変わり目だし、乾燥のせいだろう。そう高を括って出社したのですが、午後になると、その違和感は明らかに「痛み」へと変わっていました。特につばを飲み込むと、喉の奥にガラスの破片が刺さったかのような、鋭い痛みが走ります。しかし、熱を測っても平熱。体のだるさもほとんどありません。ただ、ひたすらに喉だけが痛い。その夜、夕食を摂ろうとしましたが、固形物を飲み込むのが苦痛で、ほとんど食べることができませんでした。市販ののど飴やトローチを試しましたが、気休めにもなりません。翌日になっても、痛みは引くどころか増すばかり。声もかすれてきました。さすがにこれはおかしいと思い、会社の近くの耳鼻咽喉科に駆け込みました。医師は私の喉を見るなり、「ああ、これは真っ赤に腫れていますね。溶連菌の検査をしましょう」と言い、長い綿棒で喉の奥をこすられました。待つこと十分。診察室に呼ばれると、検査キットにはっきりと陽性のラインが出ていました。「溶連菌ですね。熱が出ない大人の方、結構いるんですよ」と医師は言いました。診断がつき、処方されたのはペニシリン系の抗菌薬と、痛みを和らげるための鎮痛剤でした。薬局で薬を受け取り、すぐに一回分を服用。その日の夜には、あれほどひどかった喉の激痛が、少し和らいでいるのを実感できました。翌朝には、食事もなんとか摂れるように。薬の効果は絶大でした。医師からは、「症状がなくなっても、合併症予防のために十日間、必ず薬を飲み切ってくださいね」と、強く念を押されました。熱がないことで、ただの風邪だと軽く考え、受診を先延ばしにしていたらどうなっていたか。あのまま放置していたら、後になって腎臓や心臓の病気を発症していたかもしれない。そう思うと、ぞっとします。喉の尋常ではない痛みは、体からの重要なSOSサインなのだと、この経験を通して痛感しました。
私の溶連菌体験記。熱なし、喉の激痛との戦い