突然の耳の下の腫れと痛みをもたらす耳下腺炎。大人になってからかかると、仕事や日常生活への影響も大きく、できることなら避けたいものです。耳下腺炎には様々な原因がありますが、原因ごとに対策を知っておくことで、発症のリスクを減らすことが可能です。まず、最も確実な予防策があるのが、ウイルス性の「おたふく風邪(流行性耳下腺炎)」です。これに対しては、有効な「ワクチン」が存在します。日本では任意接種ですが、子供の頃に未接種で、罹患歴もはっきりしない方は、大人になってからでも接種を検討する価値は十分にあります。特に、医療従事者や教育関係者など、子供と接する機会が多い方や、妊娠を希望する女性は、感染リスクや合併症のリスクを考慮し、接種が推奨されます。抗体があるかどうかは、血液検査で簡単に調べることができます。次に、細菌性の「化膿性耳下腺炎」の予防です。このタイプの耳下腺炎は、体の抵抗力が落ちた時に、口の中の細菌が原因で起こります。したがって、予防の基本は「免疫力を高く保つこと」と「口腔内を清潔にすること」の二つです。日頃から、十分な睡眠とバランスの取れた食事、適度な運動を心がけ、過労やストレスを溜め込まないようにすることが、免疫力を維持する上で最も重要です。また、毎日の丁寧な歯磨きやうがいで、口の中を清潔に保ち、細菌の温床となるのを防ぎましょう。脱水は唾液の分泌を減らし、細菌が逆流しやすくなる原因となるため、特に夏場や体調が悪い時は、こまめな水分補給を意識することも大切です。唾液の分泌を促すことも予防に繋がります。よく噛んで食事をすることや、時々ガムを噛むこと、唾液腺マッサージ(耳の下や顎の下を優しく揉む)なども効果的です。これらのセルフケアは、唾石症の予防にも役立ちます。特別なことではありませんが、日々の健康的な生活習慣こそが、様々な原因から起こる大人の耳下腺炎を遠ざけるための、最も確実で基本的な防御策となるのです。
大人の耳下腺炎。予防のためにできること