炎天下での建設作業や農作業、屋外でのスポーツ指導など、職業柄、夏の厳しい暑さと戦わなければならない方々にとって、熱中症は常に隣り合わせの危険です。日頃から様々な対策を講じていることと思いますが、それでも体調の変化には細心の注意を払う必要があります。特に、作業中に感じる「胃の不快感」や「吐き気」は、重症化への入り口となる極めて重要なサインです。屋外作業中に、なぜ胃の不快感が起こるのか。それは、大量の発汗と体温上昇に対する体の必死の防御反応の現れです。汗として水分と塩分(電解質)が大量に失われると、血液が濃縮され、循環する血液量そのものが減少します(脱水)。体は、脳や心臓といった生命維持に重要な臓器への血流を保とうとするため、皮膚や筋肉、そして消化管への血流を犠牲にします。血流が乏しくなった胃は正常に機能できなくなり、ムカムカとした不快感や吐き気を生じさせるのです。このサインを見逃したり、「気合で乗り切れる」と我慢したりすることは、絶対に避けなければなりません。胃の不快感は、体が「水分と塩分が限界に近い」「これ以上の作業は危険だ」と発している、最後の警告です。このサインを感じたら、直ちに以下の行動をとってください。即座に作業を中断する: 「あと少しだけ」という考えが、命取りになることもあります。すぐに作業をやめ、同僚や監督者に体調不良を報告してください。涼しい場所へ避難する: 日陰や風通しの良い場所、できれば冷房の効いた休憩室や車の中へ移動します。体を冷やす: ヘルメットや作業着を緩め、首筋、脇の下、足の付け根などを、濡れタオルや送風で集中的に冷やします。水分と塩分を補給する: 経口補水液が最も効果的です。もしなければ、スポーツドリンクや、0.1〜0.2%程度の食塩水(水1リットルに塩1〜2g)でも構いません。この時、一気に飲むのではなく、ゆっくりと、こまめに摂取することが重要です。一人にならない: 必ず誰かに付き添ってもらい、状態を観察してもらうことが大切です。意識が朦朧としたり、呼びかけへの反応がおかしくなったりした場合は、ためらわずに救急車を要請する必要があります。屋外作業者にとって、自分の体の声を敏感に聞き分ける能力は、安全に作業を遂行するための重要なスキルの一つです。胃の不快感は、弱さの印ではなく、賢明な判断を促すための重要なアラームなのです。
屋外作業者のための熱中症対策。胃の不快感を感じたら