肺炎と診断された時、多くの人が気になるのが「入院しなければならないのか」「どのような治療をするのか」ということでしょう。肺炎の治療方針は、その原因となっている病原体と、患者さんの重症度によって大きく異なります。治療の基本は、原因菌を叩くための「抗菌薬(抗生物質)」の投与と、体を休ませて回復を助ける「支持療法」です。まず、治療の中心となるのが抗菌薬です。肺炎の多くは、肺炎球菌やインフルエンザ菌といった「細菌」が原因で起こります。抗菌薬は、これらの細菌の増殖を抑えたり、殺したりすることで、病気の原因そのものを取り除きます。原因菌が特定できれば、それに最も効果的な抗菌薬が選択されますが、特定できない場合でも、経験的に効果が高いとされる薬がまず投与されます。飲み薬(経口薬)と点滴(注射薬)があり、どちらを使うかは重症度によって決まります。ここで重要なのは、ウイルスが原因の肺炎(インフルエンザウイルスなど)には、抗菌薬は効果がないということです。この場合は、抗ウイルス薬が用いられます。では、入院が必要かどうかは、どのように判断されるのでしょうか。これは、日本呼吸器学会が定めた「A-DROPスコア」という重症度分類の基準が用いられることが一般的です。これは、年齢(Age)、脱水(Dehydration)、呼吸状態(Respiration/SpO2)、意識障害(Orientation)、血圧(Pressure)の5つの項目を評価し、その合計点数で重症度を判定します。点数が低い「軽症」の場合は、自宅で飲み薬の抗菌薬を服用しながら通院で治療(外来治療)が可能です。一方、点数が中等度以上で「中等症」や「重症」と判断された場合は、入院が必要となります。入院治療では、より強力な抗菌薬を点滴で投与し、酸素吸入や水分補給(点滴)といった支持療法を併せて行い、全身状態を厳重に管理します。特に、高齢者や、心臓・肺・腎臓などに持病がある方、免疫力が低下している方は、軽症に見えても急に悪化するリスクがあるため、入院を勧められることが多くなります。医師の判断に従い、適切な環境で治療を受けることが、安全で確実な回復への近道です。
肺炎の治療。入院は必要?抗菌薬の役割とは