関節リウマチというと、多くの人は関節が変形し、痛む病気というイメージを持つでしょう。しかし、それはリウマチの一つの側面に過ぎません。関節リウマチは、免疫システムの異常が全身に影響を及ぼす「全身性疾患」であり、関節以外の様々な臓器に合併症を引き起こす可能性があることを理解しておくことが、適切な治療と健康管理のために非常に重要です。リウマチの炎症は、関節を包む「滑膜(かつまく)」という組織で最も強く起こりますが、この炎症を引き起こす原因物質(炎症性サイトカインなど)は、血液に乗って全身を巡ります。そのため、体のあらゆる場所で、静かながらも悪影響を及ぼすのです。例えば、リウマチ患者さんで特に注意が必要なのが「間質性肺炎(かんしつせいはいえん)」です。これは、肺の組織が硬くなってしまう病気で、進行すると乾いた咳や息切れといった症状が現れ、呼吸機能が低下します。重症化すると命に関わることもあるため、定期的な胸部レントゲンやCTでのチェックが欠かせません。また、血管そのものに炎症が起こる「血管炎」も、皮膚の潰瘍や神経障害など、多彩な症状を引き起こすことがあります。眼にも症状が出ることがあり、強膜炎や上強膜炎といった目の充血や痛みを伴う病気を合併することもあります。さらに、リウマチの慢性的な炎症は、動脈硬化を促進させることが分かっています。そのため、リウマチ患者さんは、一般の人に比べて心筋梗塞や脳梗塞といった心血管系の病気を発症するリスクが高いとされています。このように、リウマチは関節だけの問題ではなく、肺、血管、眼、心臓など、全身の健康を脅かす可能性を秘めた病気なのです。だからこそ、全身を総合的に診ることができる「リウマチ科」や「膠原病内科」といった内科系の専門医による管理が不可欠となります。専門医は、関節の症状をコントロールするだけでなく、常にこれらの合併症にアンテナを張り、必要な検査を計画的に行い、早期発見・早期治療に努めます。関節の痛みと向き合うことはもちろん、全身の健康を守り抜くこと。それが、現代のリウマチ専門医に課せられた重要な使命なのです。
リウマチは関節だけじゃない。全身に及ぶ影響と専門科の重要性