手足口病の急性期が過ぎ、熱も下がり、子どもの元気も戻ってくると、保護者としては一安心です。しかし、発疹がまだ残っている「治りかけ」の段階で、「もう兄弟と一緒にお風呂に入れても大丈夫だろうか」「感染対策はいつまで続ければいいのか」といった新たな疑問が湧いてくることでしょう。この判断の鍵を握るのは、手足口病の原因であるエンテロウイルスの、非常に厄介な排出期間の長さにあります。手足口病のウイルスは、喉からの排出は発症後1~2週間程度で収まりますが、便の中へは、症状が完全に消えた後も、非常に長い期間(2~4週間、時にはそれ以上)にわたって排泄され続けるという特徴があります。つまり、見た目がすっかり元気になり、発疹がかさぶたになって綺麗に治ったように見えても、子どもの体内、特に腸管内にはまだウイルスが潜んでおり、便と共に排泄され続けているのです。この事実を理解することが、治りかけの時期の感染対策を考える上で非常に重要になります。お風呂に関して言えば、症状が回復し、元気になったからといって、すぐに全ての感染対策を解除するのは早計です。便を介した「糞口感染」のリスクは、依然として続いているからです。特におむつをしている年齢の子どもの場合、お風呂でお尻を洗う際に、保護者の手にウイルスが付着する可能性があります。その手で、他の兄弟の体に触れたり、お風呂上がりにお世話をしたりすれば、接触感染を引き起こすリスクは十分にあります。したがって、少なくとも発症してから2~4週間程度は、たとえ症状が治っていても、お風呂の場面では、タオルやスポンジの共有を避ける、入浴後に保護者は必ず手洗いをする、といった基本的な感染対策を継続することが推奨されます。兄弟と一緒の入浴も、この期間はなるべく避けるか、感染していた子どもを最後に入れるというルールを続けるのが最も安全です。手足口病は、「症状が治まった=感染力がなくなった」わけではない、ということを強く認識しておく必要があります。目に見える症状がなくなった後も、見えないウイルスとの戦いは続いているのです。そのことを忘れずに、油断なく丁寧なケアを続けることが、家庭内での感染ループを断ち切るための最も確実な方法と言えるでしょう。