長年、皮膚科診療の最前線に立っていると、いんきんたむしの症状で来院される患者さんの多くが、極限まで症状を悪化させてからやってくることに胸を痛めることがあります。その理由のほとんどが「何科に行けばいいかわからなかった」あるいは「恥ずかしくて行けなかった」というものです。改めて強調したいのは、いんきんたむしは決して不潔な病気ではなく、誰にでも起こりうる皮膚の感染症であり、その窓口は皮膚科であるということです。診察室で私たちが最初に行うのは、患者さんの不安を取り除くことです。下半身を露出することに抵抗があるのは当然ですが、皮膚科医にとっては全身の皮膚は一つの「診察対象」に過ぎず、特定の部位を特別視することはありません。診察も、患部を数十秒確認し、必要最小限の皮膚片を採取するだけで終わります。受診科の選択において、泌尿器科との違いを問われることがありますが、泌尿器科は主に排尿のトラブルや精巣、前立腺といった内臓に近い組織を診る科です。それに対して、いんきんたむしは皮膚の最表層の問題ですので、皮膚の構造と菌の動態に精通した皮膚科を受診するのが正解です。また、内科でも薬を処方されることはありますが、顕微鏡検査を行わないまま「とりあえず」で薬を出されると、それが菌に効かない薬だった場合に症状がこじれてしまうリスクがあります。皮膚科での専門的な加療が必要な理由は、白癬菌が非常にしぶとい生命体であることにも関係しています。この菌は、かゆみが消えても皮膚の奥深くに潜んでおり、自己判断で通院や外用を止めてしまうと、次の夏に必ずと言っていいほど再発します。私たちは「かゆみがなくなってからが本当の治療の始まりです」と患者さんに伝えています。また、糖尿病などの持病がある方は免疫力が低下しているため、いんきんたむしが重症化しやすく、全身に広がる可能性もあります。そのような合併症のリスクまで考慮した治療ができるのは、皮膚科医ならではの強みです。現在、市販薬も多くの種類が出ていますが、自分の症状が本当に白癬菌によるものなのかを確定させないまま薬を使うのは、暗闇で鉄砲を撃つようなものです。最短で、かつ綺麗に治すためには、プロの目による診断と、医療用として承認された高純度の抗真菌薬が不可欠です。一人で抱え込まず、早めに専門医に相談してください。それが、あなた自身の快適な生活を守るための最も賢明な投資になります。
専門医が語るいんきんたむし治療と受診科の選び方