腸管ウイルスが引き起こす舌粘膜の炎症と免疫反応
ヘルパンギーナの病理学的背景に焦点を当てた技術ブログとして、エンテロウイルスの動態を解説します。この疾患を惹起する主なウイルスは、コクサッキーウイルスA群であり、これらは糞口感染や飛沫感染を介して咽頭粘膜から侵入します。ウイルスが局所のリンパ組織で増殖を開始すると、血流に乗って全身へ広がり、特定の組織に対して親和性を示します。ヘルパンギーナにおいて、なぜ喉の奥や舌周辺に特異的な水疱が形成されるのかという点については、これらの部位の重層扁平上皮細胞がウイルスにとって増殖しやすい環境を提供しているためと考えられています。感染した細胞ではウイルスの複製が行われ、その過程で細胞が破壊されることで微小な水疱が形成されます。これが物理的な刺激や二次的な細菌感染によって破綻すると、真皮が露出した潰瘍状態となり、舌神経の末梢を刺激して激痛を引き起こします。免疫学的な視点からは、ヘルパンギーナによる高熱は、体内のマクロファージやリンパ球がウイルスに対抗するために産生するサイトカインによる体温調節中枢への働きかけです。つまり、高熱と舌の痛みは、身体がウイルスを排除しようと激しく闘っている防衛反応の証左でもあります。一般的に、獲得免疫によって中和抗体が産生されるまでには数日を要するため、それまでの期間は対症療法に頼らざるを得ません。また、エンテロウイルスには多くの型が存在するため、一度ヘルパンギーナに罹患しても、異なる型のウイルスによって再感染を繰り返す可能性があるのも特徴です。舌の炎症が治まった後も、ウイルスは数週間から一ヶ月にわたって便中に排出され続けるため、排泄後の手洗いなどの公衆衛生的措置が、感染拡大の防止において極めて重要な意味を持ちます。