すねの凹みが戻らない症状を観察する際、注意深く見てほしいのが「左右の足で違いがあるかどうか」という点です。もし、両足ではなく「片足だけ」が異常にむくみ、指で押すと深い跡が残ってなかなか戻らないのであれば、それは全身の病気ではなく、その足のリンパ液の流れが物理的に阻害されている「リンパ浮腫」の可能性があります。リンパ浮腫は、血管から漏れ出した水分を回収するリンパ管の機能が低下することで起こりますが、特に過去にがんの手術(子宮がんや卵巣がん、前立腺がんなど)を受けて骨盤周りのリンパ節を取り除いた経験がある方や、放射線治療を受けた方に多く見られる後遺症の一つです。しかし、そのような手術歴がない場合でも、原因不明の原発性リンパ浮腫として片足に症状が出ることもあります。リンパ浮腫による足の凹みは、初期のうちは指の跡が残る柔らかいむくみですが、放置すると組織が線維化して硬くなり、象の皮膚のようにガチガチになって指で押しても凹まない状態へと進行してしまいます。ですので「片足だけへこんだまま戻らない」という初期のサインを見逃さないことが、その後の生活の質を守るために極めて重要です。この症状に気づいた場合、何科に行くべきかというと「リンパ浮腫外来」を設置している病院や、血管外科、あるいは形成外科を受診することになります。リンパ浮腫は一度発症すると完治が難しいと言われてきましたが、最近ではリンパ管と静脈を繋ぎ合わせる微小外科手術(リンパ管静脈吻合術)などの高度な治療も普及しており、早期であれば顕著な改善が見込めます。また、医療用弾性ストッキングを用いた圧迫療法や、専門のセラピストによるリンパドレナージといった複合的な物理療法によって、むくみをコントロールし、凹みが残らない程度の状態を維持することも可能です。片足だけの凹みを放置すると、そこから細菌感染を起こして蜂窩織炎という高熱を伴う皮膚の炎症を引き起こしやすくなるため、非常に危険です。すねの凹みが戻らないことを単なる立ち仕事のせいだと決めつけず、左右の太さを測り、明らかに片方だけが戻りにくい場合は、リンパのスペシャリストの診察を仰いでください。早めの対策こそが、足の自由と健やかな皮膚を守るための唯一の方法です。