東京都内のIT企業に勤務する三十代の男性、Aさんの事例です。始まりは一歳の長男が保育園で手足口病と診断されたことでした。長男の症状は軽く、二、三日で熱も下がり、足のポツポツもすぐに枯れていきました。Aさんは長男の看病にあたり、オムツ替えや食事の世話を積極的に行っていましたが、この時期、仕事が繁忙期であったため、自身の体調管理にまで手が回っていませんでした。長男が完治してから四日後、Aさんは仕事中に急な寒気を感じました。帰宅後、熱を測ると三十九点五度。激しい頭痛と関節の痛みがあり、翌日には手が震えるほどの倦怠感に襲われました。発熱二日目、喉に刺すような痛みを感じ始め、鏡で見ると口蓋垂の周りに無数の小さな水疱ができていました。この時点で病院を受診し、手足口病と診断されましたが、そこからの進行が劇的でした。翌日には手のひら全体に赤い斑点が現れ、数時間後にはそれらが隆起して水疱に変わりました。キーボードを打つ指先には激痛が走り、マウスを握ることすらできなくなりました。さらに翌日、足の裏にも同様の発疹が出現。Aさんは「まるで足の裏が火傷をしているようで、一歩も歩けなかった」と後に語っています。食事はアイスクリームや冷やしたおかゆを少量口にするのが精一杯で、数日間で体重が三キロ減少しました。最も深刻だったのは、高熱と痛みによる睡眠不足が続き、精神的にかなり追い詰められたことです。通常の生活に戻るまでには十日間を要し、その後も一ヶ月ほどは手の皮が剥け続けるなどの不快な症状が続きました。さらに二ヶ月後には、左手の親指と人差し指の爪が浮いて剥がれるという後遺症も経験しました。この事例から学べるのは、大人の手足口病は単なる皮膚病ではなく、全身を衰弱させる深刻な感染症であるということです。特に乳幼児を持つ親は、自分が感染した場合の業務への影響を考慮し、看病の際の手洗い、消毒、そして使い捨て手袋の着用といった徹底した防御策を講じる必要があります。Aさんは「子供の病気だとなめていたのが最大のミスだった。あの苦しみは二度と味わいたくない」と振り返っています。
家庭内感染から始まった大人の手足口病の重症化事例