家庭内で食中毒の疑いが出たとき、特に注意を払わなければならないのが子供と高齢者という、いわゆる「社会的弱者」の健康管理です。彼らは大人に比べて体の予備能力が低く、わずかな下痢や嘔吐でも短期間で致命的な脱水症状に陥るリスクを抱えています。まずお子さんの場合ですが、受診すべき診療科は一択、小児科です。子供の食中毒で最も多い原因の一つはノロウイルスですが、子供は嘔吐物を喉に詰まらせて窒息したり、誤嚥性肺炎を起こしたりするリスクがあります。また、小さな体にとっての五百ミリリットルの下痢は、大人にとっての数リットルの出血に相当するほどのダメージを与えます。小児科では、体重に応じた正確な点滴量の計算や、子供でも飲みやすい経口補水液の指導など、専門的なアプローチが行われます。親御さんが「何科に行けばいいのか」と迷っている間に、子供のぐったりとした様子が強まるようなら、即座に夜間小児救急を頼ってください。一方で、高齢者の場合ですが、こちらは内科、できれば消化器内科を併設しているクリニックが最適です。高齢者の食中毒が厄介なのは、心臓病や糖尿病といった持病を抱えているケースが多く、下痢による脱水が引き金となって脳梗塞や心筋梗塞を誘発したり、腎機能が一気に悪化したりすることがあるからです。高齢者は喉の渇きを感じにくいため、本人が「大丈夫だ」と言っていても、実際には細胞レベルで干上がっていることが多々あります。家族が「おしっこの回数が減っていないか」「口の中がパサパサしていないか」「いつもよりぼーっとしていないか」を確認し、少しでも異変があれば、内科を受診させて点滴を受けるようにしましょう。また、高齢者の食中毒は、餅やパンのように「詰まらせる」ことでも起こる誤嚥の二次被害にも注意が必要です。さらに、子供も高齢者も、食中毒の原因菌によっては重篤な後遺症を残すことがあります。例えばO157による合併症などは、初期の適切な治療がその後の人生を左右します。科を選ぶという行為は、その専門性に期待するだけでなく、その年齢層に特有の合併症を未然に防ぐためのリスクヘッジでもあります。家庭内での感染拡大を防ぐための消毒(塩素系漂白剤の使用など)と並行して、適切な診療科への迅速な受診を行うことが、大切な家族の命を守るための最優先事項となります。
子供や高齢者が食中毒になった際に優先すべき診療科と迅速な対応