救急外来や一般外来を担当していると、食中毒の疑いで来院される患者さんに頻繁にお会いしますが、その多くが「もっと早く来ればよかった」あるいは「どの科に行けばいいか迷っていた」と仰います。現場の医師の立場から言わせていただければ、食中毒のような急性の胃腸症状がある場合、まずは「内科」で全く問題ありません。内科は体全体のバランスを診る場所であり、食中毒において最も恐ろしい脱水や電解質異常を素早く見抜き、補液、つまり点滴を行うことで全身状態を安定させることができるからです。ただし、症状に特徴がある場合は科を選ぶ基準が変わります。例えば、激しい腹痛と共に血便が出ている、あるいは右下の腹部が異常に痛むといった場合は、炎症性腸疾患や虫垂炎などとの鑑別が必要になるため、消化器内科を専門とする医師に診てもらうのが理想的です。消化器内科であれば、超音波検査や内視鏡を駆使して、腸の状態をより詳細に観察することが可能です。また、食中毒の原因が細菌性なのかウイルス性なのか、あるいは寄草虫によるものなのかによって治療方針は大きく異なります。例えばアニサキスによる食中毒であれば、内視鏡で直接原因を取り除く必要があります。このような処置は、一般内科よりも設備の整った消化器科が得意とする分野です。一方で、単なる嘔吐下痢だけでなく、視界がぼやける、呼吸が苦しいといった神経症状が現れた場合は、ボツリヌス菌などの極めて危険な毒素が疑われるため、科を選ぶ暇もなく救命救急センターを受診してください。受診の際に医師が最も知りたい情報は、「いつ」「何を食べて」「いつから症状が出たか」の三点です。食中毒は潜伏期間が原因菌によって数時間から一週間以上と幅があるため、一週間前までの食事内容をメモしておくと診断が非常にスムーズになります。また、自己判断で市販の下痢止めを飲むことは、体内の毒素や菌を排出するのを妨げ、症状を長引かせる原因となるため、絶対に避けてください。まずは内科、特に「消化器」の看板を掲げているクリニックを第一候補とし、全身状態が悪いときは躊躇せず大きな病院の救急外来を頼る。この優先順位を守ることが、あなたの体を守る最善の策です。私たちは日々多くの患者さんを診ていますが、食中毒は誰にでも起こりうる災難です。遠慮せず、早めに受診して楽になってください。
現役医師が教える食中毒で内科か消化器科か迷った時の選択肢