四十代半ばを過ぎ、毎年受けている健康診断。これまでは特に大きな異常もなく過ごしてきましたが、今年の通知表を開いた瞬間、私は自分の目を疑いました。便潜血の項目に「陽性」の文字があり、横には「要精密検査」という冷徹な指示が添えられていたのです。正直なところ、最初に感じたのは恐怖でした。頭の中には「大腸がん」という四文字が大きく浮かび、それから数日間は何をしていてもそのことが頭を離れませんでした。ネットで検索すると、痔でも陽性になると書いてあり、自分にも思い当たる節があったため「きっと痔だろう」と自分を納得させようともしました。しかし、もし本当に病気が隠れていたら、放置することで取り返しのつかないことになるという不安の方が勝り、意を決して近所の消化器内科を受診することにしました。診察室で先生は私の話を穏やかに聞いてくれました。先生は「便潜血で陽性が出る人のうち、実際にがんが見つかるのは数パーセント程度です。しかし、がんの前段階であるポリープが見つかる方はもっと多い。それを今のうちに取っておくことが最大の予防になるんですよ」と説明してくれました。その言葉で私の心は少し軽くなり、人生で初めての大腸内視鏡検査を申し込みました。検査当日までの数日間は、食事制限や当日の下剤服用など、未知の体験への不安がありましたが、いざ始まってみると想像していたよりもずっとスムーズでした。病院から渡された下剤を数時間かけて飲み、腸の中を空にする作業は確かに大変でしたが、出し切った後の爽快感は意外なほどでした。検査自体は鎮静剤を使ってもらったため、うとうとしている間に終わり、痛みを感じることは一度もありませんでした。検査後の診察で、先生はモニターに映った私の腸の画像を見せてくれました。「小さなポリープが一つありましたが、その場で切除しました。良性の段階でしたので、これで安心です」という言葉を聞いた瞬間、全身の力が抜けるような安堵感を覚えました。もしあのとき、陽性という結果を「たかが便潜血」と軽視して放置していたら、数年後にはそのポリープががん化していたかもしれません。精密検査を受けるまでは、確かに時間も手間もかかり、心理的な負担も小さくありません。しかし、たった一日の検査で自分の命を守ることができるのだと、身をもって知ることができました。今、便潜血陽性の結果を手に震えている方がいたら、私は伝えたいです。病院へ行くことは、病気を探しに行くことではなく、安心を買いに行くことなのだと。消化器内科の専門医という力強い味方を頼ることで、明るい未来への切符を再び手に入れることができるのです。