手足口病のウイルスは、主にコクサッキーウイルスA6、A16、エンテロウイルス71といった種類がありますが、近年は大人が感染すると特に重い症状を引き起こすタイプが流行することが増えています。感染症の専門医としての視点から見ると、大人の症例で特徴的なのは、単なる皮膚の異常にとどまらない全身性の反応です。多くの大人が訴えるのは、発疹が出る前の段階での強烈な悪寒と筋肉痛です。これはウイルスが全身を巡るウイルス血症の状態を反映しており、この時点で高熱が出るため、多くの人が重いインフルエンザや急性咽頭炎と誤認します。しかし、手足口病を決定づけるのは、その後の水疱の質です。大人の水疱は子供よりも大きく、時に周囲が赤く腫れ上がり、強い痒みや灼熱感を伴います。特に指先の爪の周りに水疱ができると、神経を圧迫して拍動性の痛みを感じることもあります。また、口内炎についても、舌の側面や裏側、さらには喉の奥の軟口蓋にまで広がるため、嚥下障害に近い状態になることも珍しくありません。感染リスクについても誤解が多いのが現状です。大人は免疫があるから大丈夫だと思われがちですが、手足口病の原因ウイルスは複数存在するため、子供の頃にあるタイプに罹っていても、別のタイプに対しては免疫がありません。その結果、子供が保育園からもらってきたウイルスに対し、無防備な大人が直撃を受ける形になります。さらに、大人の場合は二次感染、つまり水疱を掻き壊した場所に細菌が入り込んで化膿し、蜂窩織炎などの別の病気を引き起こすリスクも子供より高い傾向にあります。治療において最も重要なのは、脱水の防止と十分な休息です。大人は仕事を優先して無理をしがちですが、心筋炎などの重篤な合併症は、無理を重ねた際に起こりやすくなります。もし動悸や息切れ、激しい頭痛といった、通常の手足口病の範疇を超える症状が出た場合は、直ちに専門医の再診を受けてください。また、治癒後の爪の脱落については、ビタミン不足や他の病気ではなく、ウイルスの影響による一過性のものなので、パニックにならずに新しい爪が生えてくるのを待つのが正解です。このように、大人の手足口病は全身に波及する疾患であることを正しく理解し、甘く見ない姿勢が求められます。
専門医に聞く大人の手足口病の意外な症状と感染リスク