私は、自分の健康にはそれなりの自信を持っていました。冬の寒い時期に少し喉がイガイガし、熱を測ってみると三十七度二分。よくある風邪の引き始めだろうと考え、市販の風邪薬を飲んで早めに就寝すれば翌朝には治っているはずだと思っていました。しかし、翌朝になっても熱は下がらず、むしろ三十七度五分程度までじわじわと上がり、体全体に重だるい倦怠感が居座り続けました。咳も出始めましたが、激しく咽せ返るようなものではなく、時折コンコンと乾いた音が出る程度でした。仕事が忙しかったこともあり、私はその微熱を抱えたまま一週間ほど出勤を続けました。しかし、八日目の夜、異変に気づきました。寝ようとして横になると、肺の奥からヒューヒューという小さな音が聞こえ、呼吸が浅くなっているのを感じたのです。鏡を見ると顔色は土色で、階段を少し上るだけで心臓が激しく波打ちました。翌朝、重い足取りで近所の内科を訪れました。先生は私の熱がそれほど高くないことを確認しつつ、慎重に聴診器を当て、「少し音が怪しいですね」とレントゲン室へ私を促しました。現像された写真には、私の右肺の下半分が、霧がかかったように白く濁った像が映し出されていました。診断は肺炎。しかも、それなりに範囲が広がっており、即座に抗生剤の点滴が必要な状態でした。先生からは「熱が高くないからと油断するのが一番危ないんですよ。あなたの体は精一杯戦っていたけれど、熱を出すだけのエネルギーが足りなかったのかもしれないし、この種類の細菌はあまり高熱を出さないこともあるんです」と諭されました。あの日、もし受診を一日でも遅らせていたら、私はそのまま職場や道端で倒れていたかもしれません。入院は免れましたが、自宅での療養は想像以上に過酷でした。処方された薬を飲み続けても、一度ダメージを受けた肺はすぐには元のようには膨らまず、少し動くだけで息が切れ、微熱が完全に平熱に戻るまでにはさらに十日ほどの時間を要しました。この経験を通じて私が学んだのは、肺炎は必ずしも高熱という派手な演出を伴って現れるわけではないということです。微熱という控えめなサインの裏側に、命を脅かすような深い炎症が隠れていることがある。自分の体を過信せず、一週間以上続く微熱や、普段とは違う咳の感覚を軽視してはいけないと、身をもって痛感しました。肺炎という病気は、音もなく忍び寄ってくる影のような存在です。もし今、あなたが「ただの風邪」だと思って微熱に耐えているのであれば、どうか私のようにはならないでください。病院のレントゲン一枚で、その不安は解消されるのですから。